最初に

この記事の根拠となる元記事ですが、中国国内で国益に関する記事は政府の意向により削除さる傾向にあります。この記事を読んだ時にはニュースソースは削除されている可能性も高いのでこの点をご注意ください。

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そもそも「バッテリーロック」とは何か?

電気自動車(EV)には、OTA(Over-the-Air)と呼ばれる無線ソフトウェアアップデート機能が搭載されています。スマートフォンのアップデートと同様に、車両がインターネットに接続されている間にメーカーのサーバーからソフトウェアを受信し、機能追加・不具合修正・性能改善などが行えます。

中国で問題となっているのは、このOTA機能を使ってメーカーが車のバッテリー管理システム(BMS)のパラメーターをユーザーに無断で書き換え、実質的な充放電容量を制限する行為です。中国語では俗に「鎖電(バッテリーをロックする)」と呼ばれ、社会問題として急速に注目を集めています。

バッテリーロックニュースの引用元

情報源となった央視網は報道内容を訂正し、行政指導の理由は「出力制限」単独ではなく「急加速の異常、バッテリー発火、OTA不具合」を含む包括的なものだったと釈明をしていますが、一度報道された今となってはバッテリーロックに対する疑いは広がっています。

バッテリーロック問題の核心

カタログ上のバッテリー容量はそのままでも、ソフトウェアの充放電しきい値を変更することで、実質的にオーナーが使える電力量を減らすことができます。BMSの上限・下限設定を変えるだけで、オーナーの気づかないうちに航続距離や充電速度が大きく低下します。

なぜメーカーがバッテリーをロックした場合のメリット

バッテリーロックが実際に行われたかどうかは別として、メーカー側の主な建前は「安全性の向上」「熱暴走リスクの低減」「バッテリー劣化の抑制」です。たしかに充放電の上限・下限を抑えることでセルへの負荷が減り、長寿命化につながる側面はあります。

しかし業界専門家が指摘するより大きな動機は財務上のメリットです。多くの中国EVメーカーは「8年・16万km走行時にバッテリー容量が初期値の70%を下回った場合に無償交換・修理」という保証を提供しています。意図的に充放電容量を絞れば劣化速度を落とすことができ保証期間内に70%の閾値を超えにくくなります。年間数百万台を販売するメーカーにとって、この手法は数十億元単位のコスト削減につながりうるのです。

「こうした制限をバッテリー安全性の最適化や火災リスクの低減と説明しますが、主な動機はコスト削減です。大量販売するメーカーにとって、バッテリーのロックは年間数十億元の費用削減につながりうる。この慣行は運用リスクと減価コストを車両オーナーに転嫁するものだ」          — Gasgoo(中国自動車業界メディア)2026年5月の報告より

実際に何が起きたのか?確認された事例

① 航続距離が500kmから300km以下に激減(複数オーナー報告)

中国国営放送・中央広播電視総台(CCTV)が2026年4月17日に放送した特集では、複数の実際のオーナーの証言が紹介されました。OTAアップデート後に航続距離が大幅に減少したというものです。

  • あるオーナーは「更新前は100kWh以上充電できていたのに、更新後は約80kWhしか入らなくなった。バッテリー健全度(SOH)の表示は95%のままなのに」と証言
  • 同オーナーの実走行距離は450〜480kmから400km以下に低下
  • 別のオーナーは急速充電時間が約40分から約70分に延びたと報告
  • 多くのオーナーがディーラーに相談しても「天候による影響」「システムの安全最適化」と説明され、パラメーター変更について明確な回答を得られなかった

2026年3月に中国の消費者保護窓口「12315」に寄せられた関連苦情数 12,000件

苦情件数の前年同月比増加率 +273%

MIITから規制上の警告を受けたEVメーカー数 8社

正式な調査対象となったメーカー数 3社

② 小鵬(Xpeng)自動車のOTAアップデート問題

中国国内では、複数のNIOや小鵬(Xpeng)モデルで特定の温度条件下において急速充電速度が大幅に低下し、150kWの充電能力を持つ車両で50kWしか出力されないケースも報告されています。メーカー側は「バッテリー保護のための自動制御」と説明していますが、OTAで設定変更が行われたケースとの区別が消費者にとって難しく、不信感を招いています。

③ 小米(Xiaomi)SU7 Ultra のパワー制限問題(2025年)

2025年の事例として、小米自動車が発表直後のSU7 Ultraに対してOTAアップデート(バージョン1.7.0)を配信し、1,154kWの最高出力を662kWに制限した件は世界的な注目を集めました。サーキットで特定のラップタイムを達成しなければフルパワーを「アンロック」できないという仕様で、既存オーナーも突然の性能ダウングレードを受けました。小米は強い批判を受けて制限を撤回し、公開謝罪しています。

今回の「バッテリーロック」問題はこのパワー制限問題と異なり、より隠密性が高く、かつ財務的動機が明確な点が特徴です。

中国政府はどう動いたか?規制の経緯

2020年

中国の市場監督管理総局が「OTAによるリコール対象製品の修正に関する透明性・適正性についての通知」を発令。OTA規制の端緒となる。

2026年3月

工業情報化部(MIIT)と国家市場監督管理総局が、EVのOTA管理に関する強化規制を施行。いわゆる「OTA4禁止事項」が明文化される。

2026年4月17日

CCTVが「鎖電(バッテリーロック)」問題を詳細に特集報道。MIITが業界を調査し、8社を呼び出した(召喚)と報道される。この報道が後日SNSで拡散され、社会的な注目を集める。

2026年5月初旬

苦情件数が前年比273%増の1万2,000件超に上ったことが明らかになる。3社が正式調査の対象に。2社は問題のOTAパッケージを撤回し、航続距離・性能の回復を約束。

2026年5月9日

BYDおよびXpeng(小鵬汽車)が公式声明を発表し、「バッテリーロックの実施も、規制当局から召喚通知を受け取ったことも一切ない。虚偽情報を流した者に対し法的措置を取る」と否定。

「OTA4禁止事項」の内容

2026年3月に施行された規制には、以下の禁止事項が盛り込まれました:

禁止事項内容
禁止1サイレントOTAユーザーへの通知・同意なしにOTAアップデートを実施すること
禁止2バッテリーロック・機能ダウングレードバッテリー容量の制限や既存機能の性能低下を引き起こすOTAの配信
禁止3コアパラメーター変更の無申告車両のコアパラメーター(BMS設定等)を変更する場合の当局への事前申告義務の不履行
禁止4OTAによるリコール回避リコールに相当する不具合をOTAアップデートで隠蔽・回避すること

⚖️ 法的評価

中国の法律専門家によると、オーナーの同意なしに行うバッテリーロックは、消費者保護法違反(情報提供・選択の権利の侵害)に当たり、さらに出荷時の性能仕様を変更する行為として契約違反を構成する可能性があります。人民日報も「車両の安全を保証コストの回避に使ってはならない」と論評しています。

日本に輸入されるBYD車への影響は?

現在、日本ではBYDが「ATTO 3」「ドルフィン」「シール」などを販売中です。BYD Auto Japanは公式声明でバッテリーロックを明確に否定しており、また日本で販売される車両は国際法規であるUN R155(サイバーセキュリティ)とR156(ソフトウェアアップデート管理)への適合が義務付けられています。

日本市場のBYD保証内容(2026年時点)

  • 新車標準:8年・16万km でSOH(バッテリー健全度)70%以上を保証
  • 延長保証:10年・30万km(ファーストオーナー向け)
  • 認定中古車:10年・30万kmのSOH70%保証に拡大済み(2025年6月〜)
  • SOH測定は正規ディーラーのBYD専用診断機で実施

⚠️ 注意点

保証内容がしっかりしていても、「OTAによってBMSパラメーターを変更することで70%閾値を超えにくくする」という手法は、保証期間中のコスト抑制として理論上は有効です。重要なのは、アップデート内容の透明性と同意プロセスが確保されているかを継続的に確認することです。

国際規制(UN R155/R156)の壁

日本・欧州などでは、UN R155(サイバーセキュリティ管理システム)とUN R156(ソフトウェアアップデート管理システム)への適合が型式認証の条件となっています。BYDはすでにこれらを取得しており、OTAで行えるアップデートの範囲や手続きには一定の制約があります。中国国内市場向けの車両とは、規制上の取り扱いが異なる部分もある点は知っておきたいポイントです。

EVオーナーが自分で取れる対策

中国のメディアや法律専門家がアドバイスする対策は、日本のEVオーナーにも参考になります。

  • OTAの自動インストールをオフにし、アップデート内容を都度確認してから適用する
  • 定期的に充電記録とソフトウェアバージョンを記録・保管しておく(スクリーンショットなどで)
  • OTAアップデート前後で実際の航続距離・充電速度の変化を比較する
  • 問題を感じたら正規ディーラーにSOH測定を依頼し、数値を書面で確認する
  • 不当な性能低下が疑われる場合は消費者センターや国民生活センターに相談する
  • ディーラーの「安全最適化」「天候の影響」という説明をそのまま受け入れず、具体的なデータを求める

💡 ポイント

バッテリーの健全度(SOH)は、ディーラーの専用診断機でしか正確に測定できないのが現状です。定期的に測定記録を取っておくことが、将来の保証請求の際に重要です。

まとめ:透明性のあるOTA運用がEV普及のカギ

「OTAバッテリーロック」問題は、中国EV産業が急成長した結果として表面化した、ソフトウェア定義車両(SDV)時代特有のリスクです。OTA技術自体は不具合修正や性能向上に不可欠な存在ですが、メーカーとユーザーの間に情報の非対称性があることが問題の根本にあります。

今回の中国政府の規制強化は、業界全体に対してより高い透明性を求める重要な一歩です。日本市場のBYD車については、国際規制の適合義務があり直ちに同様の問題が起きるとは言えませんが、OTA時代のEVオーナーとして、アップデート内容を受動的に受け入れるのではなく、能動的に確認する姿勢を持つことが重要です

※ 本記事は2026年5月11日時点の報道・各社公式発表・規制情報をもとに作成しています。状況は引き続き変化していますので、最新情報は各メーカーの公式サイトおよび国土交通省・消費者庁の発表をご確認ください。BYD Auto Japan公式ページ、および中国自動車メディアのTechNode・CarNewsChina・Gasgooの報道を参照しています。

中国のEV戦略は国策である為、不都合なニュースは順序削除されています。おそらく中国メディアの記事は6月には全て中国当局の意向で全て削除が完了し全てはなかったかのようになる可能性が大いにあります。

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